調査研究の現場から @フランス 総合地球環境学研究所 齋木真琴さん

人間文化研究機構では、機構のプロジェクトの推進及び若手研究者の海外における研究の機会(調査研究、国際研究集会等での発表等)を支援することを目的として、基幹研究プロジェクト・共創先導プロジェクトに参画する若手研究者を海外の大学等研究機関及び国際研究集会等に派遣しています。
今回は、フランスに派遣された総合地球環境学研究所の齋木真琴(さいき まこと)さんからの報告です。
総合地球環境学研究所 Sustai-N-ableプロジェクト研究員の齋木真琴です。2024年9月2日から2024年12月24日までフランス南西部にあるUniversité de Pau et des Pays de l‘Adour(ポー大学)で研究活動を共同研究者らと実施しました。
本派遣で行った研究は、水俣病でよく知られている「水銀」を扱っています。現在、日本では製品への使用も制限され、昔の環境問題として語られることが多い水銀ですが、化石燃料の燃焼やセメントの製造などの人間活動によって、現在も大気や水環境中に排出されています。環境中に排出される水銀の多くは人間の健康には害の少ない形(無機水銀)ですが、環境中では微生物の働きにより毒性の高い形(メチル水銀)に変換されます。
研究では、淡水と海水が混ざり合い、水の性質が常に変化している河口域で、水銀の形の変化や川の上流・海との間での水銀の移動を定量することを目的としています。水の性質(潮流、塩分濃度、懸濁物質濃度など)は水銀の変化・移動に影響を与えており、これらを観測だけで把握することは難しいです。そこで派遣期間中は、ポー大学にすでに蓄積されている観測データを用いて、水銀の変化・移動を解析する数値モデルの開発を行いました。

このモデルを使うと、川を伝って流れてくる陸域由来の水銀の量や潮汐によって河口に流れ込む海域由来の水銀の量、そして河口域に存在している無機水銀とメチル水銀の量などが分かります。
今後はこのモデルの精度を高め、将来的には水銀汚染が著しい途上国で適用することで環境問題の解決を目指していきたいです。
派遣期間中は、派遣先大学での解析作業が主でしたが、休日には大学の研究者や学生達とハイキングやホームパーティーなどを行いました。大学には、スペインやドイツ、インドネシアなど様々な国からの研究者、学生がおり、一緒にフランスの自然や農耕景色を観察したり、異なる文化の料理を楽しみました。


齋木 真琴(さいき まこと)
博士(工学)。河川や湖沼、地下水などの水環境中で、水と水の中に混ざっている物質の動きや形の変化に着目して研究をしています。また、水環境を取り巻く私たちの暮らしにも視野を広げて、自然環境と人とのつながりを考えるイベントを実施しています。