MENU
感染症流行期にみる「音」・「音楽」を介在したコミュニケーションの今昔
音楽をめぐって――変わるもの、そして代わらないもの。

音楽動画配信の多様性

光平)現状を色々と教えてくれてありがとう。今の話にも出てきたけど、コロナの世界的流行とともに、「ソーシャル・ディスタンシング」と言われる様々な感染予防策が講じられるようになったよね。それに伴ってコンサートやライブの中止も相次ぎ、大打撃を受けた。

Cさん)でも、すぐに音楽動画の配信がはじまりましたね。オーケストラから個人に至るまで、世界中の音楽家たちが動画を配信し始めた。しかも無料のものが多くあったのは嬉しかったな。

Aさん)最初は収録動画が多かったけど、そのうち同時配信や特別演奏の動画が次々に出てきて、これが面白い!大学にも行けず自宅にこもってたし、よく見たなぁ。あ!あとはオーケストラの団員がそれぞれの自宅から演奏する「テレワークオーケストラ」も好きですね。

光平)たしかに音楽動画の配信は一気に多様性を帯びたよね。それって、長期的にみれば音楽そのものの変容にも繋がる可能性ってない?

Dさん)そうですよね。演奏会動画を今後もネットで見られるとすると、ホールにわざわざ足を運ぶ人っているんですかね?

光平)みんなはどう思う?コロナ感染症拡大前って、オーケストラが新しい客層を拡げるため、あるいは会員向けの配信ツールとして小規模に動画を用いることはあったよね。だけど、今回の感染症拡大を受けて、演奏会までもが同時配信されるケースも多くなってきた。こうしたことが、これからの音楽鑑賞に何か影響を与えそうかな?

Aさん)技術面だと…第5世代移動通信システム(5G)の運用が始まったことで、これまでのCDやレコードには織り込むことのできなかったライブ感が増したとも言われていますよね。そうしたことも音楽鑑賞の在り方に影響を及ぼしそう。

Bさん)たしかに。最近、クラシックでもロックやジャズとか、他の音楽ジャンルと同じく「ライブ」そのものの魅力を語るような記述が音楽雑誌とかにも増えてきたかも。

光平)それって「ニコ生」(「ニコニコ生放送」の略)の影響もある??

Bさん)そうそう。ライブ映像が同時配信されることも多いですよね。

Cさん)「ニコ生」配信のメリットっていうか、なにがいいの??

Bさん)うーん。メリットは分からないけど、おもしろいのは視聴者の反応が瞬時に画面にあらわれることかな。

光平)なるほど、いわば「双方向」的なやり取りが音楽の現場でとれるということ?

Aさん)しかも、その書き手の多くは他の音楽ジャンル愛好する人たちだったりするんですよ。クラシックに全然興味なかった人たちもいて、その人たちが「一音楽(いちおんがく)」としてクラシックに触れ、忌憚なく意見を出し合ったりする。

Dさん)視聴者は番組中に「投げ銭」や「寄付」もできるよね。視聴者は他の人たちの反応をリアルタイムに知ることができるから面白いけど、演奏側としてはちょっと怖い面もあるかも…。

光平)そうだね。視聴者同士のコミュニケーションもあるんじゃない?私が視聴した演奏会では、その時に流れている楽曲の詳細についてある人が質問をして、別の視聴者がそれに答えるような場面があったよ。

Bさん)そういうやり取り、私も見たことあるんですけど、知らない人と語りながら演奏を聴くことに最初はものすごく違和感ありました。けど、慣れてくるとまるで同じ演奏会場で耳を傾けているような…不思議と一体感すら感じたかなぁ。

Cさん)わたしも。でも、やっぱり演奏会場に足を運び、実際に音を浴びたい、体感したいって気持ちも強くあるな。それで今は、感染症対策を講じてる演奏会には、コロナ禍前よりも足繁く通ってる(笑)

光平)そうだよね。こうしたオンラインを用いた音楽の現場が拡がっていったこと――これも今後、「感染症×音楽」の歴史を振り返るなかで語られていく大きな要素なのかもしれない。過酷な状況を受けて変容していくこと、他方、なににも代えがたいもの、そうした多層性を帯びつつ発展していくであろう今後の音楽界の動向を注視していきたいと思います。色々と話をするなかで、様々な新しい兆しのようなものも見えてきました!みなさん、今日は本当にありがとうございました!

Copyright (C) 2023 National Institutes for the Humanities. All Rights Reserved.
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構