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vol00/<危機>の時代に
人文知コミュニケーター座談会

今後のテーマ:噂

  皆さんのテーマのつながりで何となく言い出せなかったのですけど。すごく壮大なテーマで。

  行き過ぎたかな?

  いえいえ。私の興味は本当に低俗で、こういう社会の混乱における人の噂の力が気になっています。例えば、最初の頃はお湯を飲むとコロナ菌の予防につながるという情報が出回ったりしましたよね。あとは先ほども話しましたけどアオサがいいという噂があって、私はまんまと信じてしまいました。噂による混乱の中で、思いがけず価値が上がり、市場で売りさばかれたものが日々ある。例えば昨日のニュースだと、野菜の売れ行きがいいと。売れ行きがいいので白菜や大根が高いという。要は家族で集う時間が長いので、鍋物を食べる回数が多くなって、それで高騰しているという話でした。つまり、混乱の中で広まる噂があり、それをきっかけに爆発的に売れるものがあるという、人の生活に合わせて変化していく事柄が、私は面白いと思います。例えば「同じような現象が昔もありました。江戸時代の書物を見てみましょう」という企画をやってみたら、意外に今の生活に潤いが出る人もいるかもしれないし、それを糸口に研究の世界にはまる人もいるかもしれない。これまで人文知を全く知らなかった人が、ちょっとこのサイトもお気に入り登録してみようとなるかもしれない。そういう種まきのような記事を書いてみてもいいと思うんです。そのいい例がアマビエで、そんなに厄払いなどに興味がなかった人がそこから興味を持ってくれるとか、これを機会に人文知の魅力を伝えて、過去の人間の営みに興味を抱いてもらうコンテンツもあっていいかなと思っています。
ちょっとアマビエの説明をしますと、妖怪のアマビエというのがいて、その画像がお守りになると話題になり、和菓子屋さんがそれをモデルにお菓子を作ったりしています。私はよく手芸をするんですが、手芸を趣味にしている人のTwitterなどをみていると、アマビエの人形を作った人の投稿が相次いでいます。あとは最近新聞で目にしたものでは、「ビックリマンチョコ」のシールの作者がそれを使って製品化したとか(「朝日新聞」2020年04月27日夕刊)、アマビエブームがすごく渦巻いているんです。私はそういう不思議な文化現象を面白いと思いました。
なので、このコーナーで扱うテーマも、在宅勤務など、読者層のことを考えたらセンシティブな話題になるようなものもあれば、私が今話したように「そんなこともあるよね」という身近なトピック立てまで、色々な話題があってもいいと思うのです。

  私も最初はそういうアプローチをと思っていたのですが、なぜか話がこういう方向に進んできてしまいました。流行るものというのは人類学的にも面白いと思う。呪術に近いではないですか。

堀田  かつ、物質文化でもいけそうですね。アマビエの展開も物質文化として他の地域と比較することもできるし、時代的に比較することもできると思う。危機に直面した時にどんなふうに象徴にすがっていくかということもみえるだろうし。色々な角度から切れるのではないかと思います。

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