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「⾷」というレンズがとらえたその瞬間 Capturing the Moment through the Lens of Food
「⾷」というレンズがとらえたその瞬間 Capturing the Moment through the Lens of Food
大変な今だから―「食」や「レシピ」を見つめてみよう Survive this Challenging Time Together̶Rethinking Food, Drink, and the Recipe!

5. 雑誌の中を覗いてみよう
Letʼs Explore the Content of the Magazine

 「コロナ禍で⽣まれたコルビー⼤学料理集⼤成」には学術的な⼩論もたくさん含まれており、そのトピックには次のようなものがありました。

The Colby Coronavirus Cooking Collective included a number of scholarly essays:

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 私は、先住アメリカ⼈の植物や⼟地経営に関する知識が⾷料⽣産の安定をどう助けたかについて考えてみたわ。

I examined how using Native American knowledge about plants and the management of the land might help to produce food more sustainably.

 私は、パンデミック時のスーパーによる価格つり上げについて分析したのよ。

I studied price gouging by supermarkets during the pandemic.

 私は、社会的・法的影響を受けながら形作られるアイデンティティと「⾷」とについて、国家の枠を超えて調べてみた!

I investigated the constitution of identity and food beyond the nation.

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 何⼈かの学⽣はレシピを提供しました。

A few students contributed recipes.

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 オンライン講義になって、お昼を⾃分で毎⽇作ることになったのはちょっと⼤変だった。両親が共働きだからね。でも、そのおかげで料理の仕⽅を学んだよ〜。

My parents worked during the day, so I was in charge of fixing my lunch every day. It was a bit challenging, but well… that helped me learn how to cook!

 ぼくは⺟が毎年恒例でやっている⽣鮮農産物を⽸詰にする作業をレポートしたよ。

I reported on my motherʼs annual ritual of canning our fresh produce.

 私は妹が4 ⼈いるんだけど、コロナ禍でご飯を作ってあげているうちに、⼈気のレシピを発⾒したよ!クラスのみんなにも紹介するね。

I have four younger sisters. When I was feeding them during the pandemic, I developed a recipe that everyone liked to eat. I will introduce it to you, too!

 パンやお菓⼦やその他ベーキングの経験について書いてみた。楽しかったなあ。

I chartered my experiment in making my own baking. That was fun!

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 中には、コロナ禍による変化に⼾惑い、途⽅にくれている学⽣もいました。でも、その悩みを共有することは助けになったと思います。

Of course there were students who felt at loss due to the changes caused by the pandemic. Yes, it was tough, but sharing such disappointments and frustrations with others in fact helped us survive through this challenging moment.

 そうですね。状況に応じて学期末の課題を変更したのは、本当に良いアイデアだったと思います。

I agree, and I think that Prof. Duff did a great job adjusting the final assignment to accommodate changing situations.

では、下にいくつか実例を写真とともにご紹介します。

Here are some examples of the studentsʼ articles with pictures!

雑誌記事の実例
Excerpts from the Magazine

❦① ⾷べることに共感して̶会えない中で⾒つけたつながり
⾷べ物って、考えてみれば不思議なものです。ありふれた有形物なんだけど、それだけでは⽚づけられない、多くの象徴的意味を持っている。また、⼈や動物の⾏動にも結びついており、簡単に分類し説明するのは不可能という複雑さを秘めている…

❦② 私達は、なんて奇妙な時を⽣きているんだろう。どう説明したら良いのか。何と⽐較したらよいのか。私は今、⼦供時代に育った部屋で⼤学の講義を受けている。⾃分の⼈⽣をどう⽣きるか、そして⼤⼈として独⽴して⽣きていくための能⼒をどう伸ばすか。⼤学⽣活は、それらを考える機会や経験を与えてくれるはずだった。私はそのチャンスを失い困惑している…

❦③ ⾃宅待機を余儀なくされ時間ができたことは、良し悪しだった。ずっとやりたいと思っていたことをする時間ができたことはいいが、自分の将来について考え始めたら⽌まらなくなった。私は⼤学4年⽣で、卒業が間近に迫っている。これからどうなるのだろうと不安でたまらなかった。それで、他の⼈達もやっているように、普段より⾃炊をし、料理に没頭することで少しは気が紛れた。そんな⾵に⾷べ物と向き合う中で、「⾷」って偉⼤な影響⼒をもっているということにも気づかされた。「⾷」は⼈々を結びつけ、地域社会や⽂化を形作るパワーを持っている。でも、「⾷」は⼈と⼈との違いを強調してしまったり、時には武器として使われたりすることもある。また、料理の楽しさや⾷物の⼤切さを実感する反⾯、このコロナ危機においては多くの⼈々が⾷料確保に苦⼼したことを忘れてはならない。「⾷」は基本的な⼈間の権利であるべきである。しかし、現在の⾷料管理・供給システム下では、「⾷」は特定の社会層に与えられる「特権」となっている。……現在の⾷料システムを変え、環境改善を⽬指すためには、⾷⽣活と地域の農業⽣産や季節の⽣産物に注⽬すべきだと思う。最初にアメリカに渡った⼈々は、先住⺠の⼈々と同様、取り巻く環境や植物について優れた知識を持っていた。もちろん、先住⺠には様々なグループがあり、⼀様に話すことはできない。しかし、多くのアメリカ先住⺠が「⾷」や⾃分の地域の⼟地及びそこで⾏われる農業に関する⾮常に奥深い知識を持ち、それを代々受け継いでいたことは⼤切である。

❦④ コロナウィルスの時代
⼊院者数は減ったが死亡者数は相変わらず⾼いまま
死との戦いと失望コロナウィルスが猛威を奮う中、経済も落ち込んでいく
4⽉初旬にはアメリカの失業者数は 1,600万⼈に達した
新型コロナウィルスがもたらす不安……

❦⑤ ベーコンをお家で作ろう
ベーコンを作るにあたって⾷物保存のために硝酸ナトリウムを使い始めたのはいつなのか。それを特定するのは今となっては難しいが、実は紀元前 3000 年にもさかのぼるとする証拠が残っている。塩漬け・燻製くんせいなどの加⼯技術は冷蔵保存が不可能だった昔に⾷物保存の⼿段として始まり、やがて朝⾷の代表的⾷材(例えばベーコンなど)やデリカテッセン⾁材(例えばハムやローストビーフなど)に⾵味を加える⽅法として発展を遂げてきた。スーパーに⾏けば、このような加⼯⾁材が豊富に⼊⼿できる現在において、塩漬け・燻製などの技術は各家庭の⾷⽣活を⽀えるのに必要なスキルではなくなった。しかし、少しばかり⼿間をかけ、そしてもしラッキーであったなら、家でも美味しいベーコンは作れる。そのことを皆さんにぜひお伝えしたいと思い、今回は加⼯⾁の中でもダントツ美味いとされているベーコンのレシピをご紹介することにした。ベーコン作りには基本となる4ステップがあるが、その際に様々なバリエーションを加えられるので、⾯⽩い反⾯、その都度判断しなくてはいけない。その選択によって、いかに出来上がったベーコンが変わっていくかについても⾔及したい。……

 このように、クラスの皆がコロナ禍における「⾷」に関する様々な経験を共有し、雑誌作りに協⼒してくれました。私は、メールで提出されたその内容を印刷し、勤務先の歴史学科のハサミやのりを使って、皆の記事を雑誌という形にまとめました。現在、この特集号のオリジナルは史学科に保管されています。

As seen above, my students contributed to this final project together by sharing their own experiences in the challenging time of COVID-19. I printed out their submissions sent by email and using stationery I found in the History Departmentʼs store room, with scissors and glue and put the magazine together. Now, the original has been kept in Colbyʼs archives.

 うわ〜、素晴らしい。学期末の課題が集められて、皆の経験が詰まった特集号として完成したんですね。ぜひ、歴史学科の宝としてキープしてくださいね。ところで、学⽣は何を受け取ったんですか?

That sounds great! Each studentʼs final assignments accumulated into a collection of memories and experiences of the semester. Please keep it as a treasure of the department. Oh, by the way, what did the students receive?

 私達は、雑誌のデジタル・バージョンを受け取ったよ。それを通してお互いの経験を共有し、さらに学び合うことができたんだ!

We received a scanned copy of the zine and enjoyed the stories of others!

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