2023年11月
Vol.1 「機構長戦略室」を設置しました
令和5年4月に「機構長戦略室」を設置しました。設置の目的は、人間文化研究機構の強みや課題を調査・分析し、どうしたら人文機構の力を十分に発揮することができるかを検討して、さまざまな企画案を作成することにあります。これまでは、機構本部に「機構長室」が置かれていて、IRの役割を担っていました。しかし、さまざまな要素が入り交じって急速に変化する現代では、より多方面の課題をより多面的に分析し、迅速に戦略を練る必要があります。そこで、これを発展的に解消し、機構長戦略室を設置することにしたのです。4月から9月までの間に4回のミーティングを行いました。その第1回と第2回の報告をしたいと思います。
第1回の機構長戦略室ミーティングは、令和5年4月24日(月)に開催しました。メンバーは、機構長、理事、事務局長、機構本部に配置する特任研究員3名です。特任研究員をメンバーとしたのは、課題に関連する情報収集と分析を特任研究員が迅速に行うことにより、課題への対応を出来るだけ早く行うためです。昨年11月の経営協議会でも「30代、40代の方の意見を聞けるような仕組みを作ったほうがよい」という意見があり、それにも対応する形になっています。また、機構執行部が最初から議論に加わることにより、ここでの議論が機構の運営に活かされやすい形にしています。内容に応じて、外部有識者の意見を聞くことができるようにもしています。これも経営協議会での意見を踏まえてのことです。
第1回では、まず、人文機構全体と各機関がどのような課題を抱えているか、リストアップすることにしました。各部署、各機関にアンケートをとったところ、あわせて100を超える課題があがってきました。おそらく、備忘録的な意味を含めて課題をリストアップしたのだと思います。このすべてを機構長戦略室の検討課題とすることはできませんが、機構全体の現状がわかる、よい資料となりました。
第2回のミーティングは、令和5年5月29日(月)に開催しました。ここでは、100を超える課題の中から、検討課題を以下の3つに絞ることにしました。
○ 研究者データの整備・活用
○ 広報体制、メディア対応の強化
○ 研究大学コンソーシアムへの対応
「研究者データの整備・活用」は、評価の面でも広報の面でも重要な課題です。これまでも、IR の一環として、研究活動や研究成果のデータを収集してきましたが、各機関の活動、成果は論文や研究発表だけでなく、展示やシンポジウムの企画など多岐にわたるため、これらのデータの集約が必ずしもうまくいっていませんでした。これらをどう効率的に整合性のとれた形で収集するか、また、それらをどう広報につなげていくかの調査・分析に早急に取り組むこととなりました。
「広報、メディア対応」は、じつは人文機構が最も苦手としてきた分野の一つです。各機関は毎月、多くのシンポジウムや公開講演会、展示などを行っています。また、研究においても新しい発見や新しい理論の提示を行っています。しかし、それがうまく社会に伝わっていない。その理由は、人文機構の研究者が自己宣伝をすることに慣れていない、宣伝をしてもまじめすぎて、あるいは難しすぎて、研究のおもしろさが社会に伝わらない、ということではないかと思います。そこで、広報の方法、メディアとのつきあい方を研究し、対策を練ることにしました。ホームページでの発信方法も見直すことにしました。
「研究大学コンソーシアム」は、もとは平成25年度から10年間、実施された研究大学強化促進事業の採択機関を中心として設置された組織です。これまでは自然科学系の分野で構成されていましたが、令和5年度から新たに人文社会系分野を含む組織に改編され、人文機構もこれに加わることになりました。新しい研究大学コンソーシアムでは、「各大学等における先導的取組や課題の発信・共有によりネットワーク化を推進するとともに、それら取組の全国的な普及・定着を目的」とし、「研究力強化に積極的に取り組む大学等における好事例の共有やHP・シンポジウムを活用した情報発信、また、研究力強化の方策・体制の整備等に関する共通の課題について、必要に応じて文部科学省関係部局を交えた俯瞰的な討議」を行います(研究大学コンソーシアムHPより)。このような組織に人文機構が加入することは、人文系の研究にとって大きな意義があり、人文機構にとっても研究の幅を広げることにつながります。人文機構はこの中で「人文社会系研究連携ワーキンググループ」の長を務めることになりました。そこで、機構長戦略室でこの活動に取り組むことにしました。
このあとの機構長戦略室の活動については、次の【機構長戦略室だより】で報告したいと思います。
人間文化研究機構
機構長 木部 暢子