No.011 - 第29回人文機構シンポジウム 和食文化の多様性-日本列島の食文化を考える-
第29回人文機構シンポジウム 和食文化の多様性-日本列島の食文化を考える-
2013年12月、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた食に関する「習わし」が、ユネスコ無形文化遺産「和食;日本人の伝統的な食文化」として登録されました。
食やその文化は、地域の歴史や風土、地理的環境、儀礼など、いわゆる「習わし」と強く結びついています。ゆえに、世界のどこでも、その地域に根ざした多様な料理や習慣があります。しかし近年、日本でも食の洋風化が進み、食に関する「習わし」を伝承していく機会が減っています。また、交通機関や情報伝達法の進化により人や物の移動が活発化するにつれ、各地の食材や料理、味付けが画一化してしまうことが危惧されます。日本全国どこに行っても同じ食材しか出てこないのでは、旅の魅力が損なわれてしまうのではないでしょうか。
人間文化研究機構(人文機構)では、2016年10月15日(土)、第29回人文機構シンポジウム「和食文化の多様性-日本列島の食文化を考える-」を公益財団法人味の素食の文化センターと共同で開催しました。このシンポジウムでは、日本列島の食の多様なありようを学術的な視点から紐解き、日本の食卓の「これから」について考えました。
まず、熊倉功夫氏(和食文化国民会議 会長、国立民族学博物館 名誉教授)から「ユネスコの無形文化遺産に登録された和食文化とはなにか」というテーマで、日本の食文化がユネスコ無形文化遺産に登録された背景と、和食の定義について基調講演がありました。続くプレゼンテーションでは、山田慎也氏(国立歴史民俗博物館 准教授)が「儀礼の展開と和食」と題して、日本各地に伝わる儀礼における食の「習わし」について紹介しました。次に齋藤玲子氏(国立民族学博物館 准教授)が「アイヌの食と交易」と題して、アイヌに伝わる儀礼における食の「習わし」について紹介しました。続いて木部暢子氏(国立国語研究所 教授)が「琉球の食文化」と題して琉球の料理に使われている食材や祭祀における料理について紹介しました。最後に秋道智彌氏(総合地球環境学研究所・国立民族学博物館 名誉教授)が、「だし(出汁)からさぐる和食の粋―海藻・魚・家畜」と題して、だしの多様性から各地の汁物を紹介し、現代のだし文化にも言及しました。
パネルディスカッションでは、和食の定義に関する意見交換が行なわれ、また日本の食の多様性を守るためには地域のコミュニティーを守ること大事であるとの結論でまとまりました。シンポジウムの内容は、YouTubeで視聴できます。
基調講演の熊倉功夫氏
パネルディスカッション