No.098 - 柴谷 方良氏が第5回日本研究国際賞を受賞
柴谷 方良氏が第5回日本研究国際賞を受賞
このたび、第5回人間文化研究機構日本研究国際賞の受賞者を、ライス大学ディディ・マクマートリー人文学教授・言語学名誉教授、神戸大学名誉教授の柴谷 方良(SHIBATANI Masayoshi)氏に決定いたしました。柴谷氏は、日本語学および一般言語学・言語学理論・アジア諸言語学の専門家として卓越した研究業績を挙げてこられました。くわえて日本語研究領域、日本列島諸語領域の国際化を牽引するとともに、国内外で次世代の言語学者・日本学者を育てられ、日本研究の国際的発展に多大な貢献をされています(選考委員会の佐野みどり委員長がまとめられた「授賞業績・授賞理由」を御参照ください)。
本機構では、2024年1月19日に上野の精養軒にて授賞式と記念講演会を催させていただきます。柴谷氏と交流をさせていただけることは、私たちにとってこのうえない楽しみです。
さて、本機構が一般財団法人クラレ財団の御協力を得て2019年に創設した日本研究国際賞も今回で5回目となりました。お陰をもちまして、国内外から優れた研究者を候補者としてご推薦をいただき、受賞者の選考を滞りなく進めることができております。本賞の趣旨をご理解いただき、御協力くださっている皆様方に、まずは、御礼申し上げたいと思います。選考委員会では、ジェンダー、地域、等々、より多様な研究者の中から受賞者の選考をしたいと考えております。さらなる候補者のご推薦を切にお願いする次第です。
(文責:人間文化研究機構理事 若尾政希)
授賞業績・授賞理由
柴谷方良氏は、50年余にわたり日本語学および一般言語学・言語学理論・アジア諸言語学に著しい貢献を果たされてきた。その成果は日本語、英語の著作や編著に結実し、とりわけ日本語および日本列島諸語領域の学術発展への国際的貢献は大なるものがあり、日本および海外の言語学界において最も際立った研究者と見なされている。
柴谷氏の研究は多岐にわたるが、使役構文や間接受動構文など日本語固有のものと考えられてきた現象を一般言語学的普遍性の中に捉え返す精緻な分析は、その独創性と普遍性によって日本語研究、統語論研究に大きな影響を与えた。
さらに注目すべきは、柴谷氏が日本語に見られる興味深い現象を多くの著書・編著書、論文集によって英語で発信し、議論が国際的に共有されることに努めたことであり、こうした学術的活動が継続的に行われた結果、日本語研究を牽引する国際的な研究グループが形成されたことである。
このような柴谷氏の日本語研究領域の国際化に対する継続的な学術活動に加え、さらに特筆すべきは、氏の研究領域が狭義の日本語の枠を超え、日本列島の諸語にまで及んでいることである(The language of Japan,1990)。たとえば、理論的視座からの分析によるアイヌ語の詳細かつ包括的な議論の提示は国際的な関心を呼び起こし、国際共同研究グループが形成されるに及んだ。その成果は、柴谷氏がシリーズ編集主幹として携わり、2022年11月に刊行されたHandbook of the Ainu Languageに見ることができる。
かくの如き研究活動、学術活動に加え、柴谷氏は南カルフォルニア大学を経て、神戸大学、ライス大学、大阪大学で教育に従事し、次世代の言語学者・日本語学者を育てた教育者でもある。現在、国際的学術誌Handbooks of Japanese Language and Linguisticsの編集主幹として、国内外の研究者ネットワークの要石であり続けている。
以上、柴谷方良氏は優れた研究成果のインパクト、関連領域の国際化への貢献、次世代の教育など、研究業績、学術活動のいずれの面においても卓越した存在であり、選考委員会は氏を第5回受賞者として選んだことを、ここに喜びとともに報告したい。
第5回人間文化研究機構日本研究国際賞授賞式及び記念講演のご案内
【前回の授賞式・記念講演】
第4回人間文化研究機構日本研究国際賞の授賞式と記念講演
機構のYouTubeチャンネルにて、授賞式・記念講演の映像を公開しています。
https://www.youtube.com/watch?v=IbmlSgpSpBw