No.100 - 調査研究の現場から @台湾 国立民族学博物館 相良 啓子(さがら けいこ)さん
調査研究の現場から @台湾
国立民族学博物館 相良 啓子(さがら けいこ)さん
人間文化研究機構では、機構のプロジェクトの推進及び若手研究者の海外における研究の機会(調査研究、国際研究集会等での発表等)を支援することを目的として、基幹研究プロジェクト・共創先導プロジェクトに参画する若手研究者を海外の大学等研究機関及び国際研究集会等に派遣しています。
今回は、台湾に派遣された国立民族学博物館の相良啓子さんからの報告です。
国立民族学博物館 特任助教の相良です。2023年10月22日から12月6日までの6週間半、機構の若手研究者海外派遣プログラムの支援を受け、台湾に行ってきました。
研究目的は、日本手話と台湾手話における語形が同じ語彙の意味とその用法を歴史的観点から分析することで、滞在中は3か所で研究議論とフィールド調査を行いました。まず、台湾で手話言語学研究に力をいれている国立中正大学で先生方とお会いし、滞在中の研究計画を確認しました。
国立中正大学台湾手話言語学センターで、先生方と一緒に記念撮影
私がこれまで行ってきた研究でわかったことなどを共有し、普段台湾手話を使って生活している国立中正大学の学生さんとも議論をする時間を設けていただきました。日本手話と台湾手話は歴史的に関連のある言語で、よく似ているといわれますが、同じ表現でも異なる意味や用法で使われる語がたくさんあります。その詳細を明らかにするために、具体的な例を出し、両言語の違いを導き出しました。
国立中正大学で日本手話と台湾手話の言語変化についての議論
言語変化を調べるためには、高齢話者を対象とした調査は欠かせません。台南および台北の両方で、70歳以上の話者にご協力いただき、対話やインタビュー調査にご協力いただきました。両地域とも、若い話者の手話は中国語からの影響を強く受けているのに対して、高齢話者の手話は、日本手話に、より近い意味や用法が使われているということがわかりました。
高齢話者に対するインタビュー調査
興味深いデータを収集できたので、今後、データに基づいて分析を進めていきたいと思っています。
相良 啓子(さがら けいこ)
共創促進研究 国立民族学博物館拠点
博士(学術)。国立民族学博物館 特任助教。
専門は、手話類型論、歴史言語学。19歳で中途失聴し、日常的に手話を使って生活をしている。著書には、『「よく見る人」と「よく聴く人」:共生のためのコミュニケーション手法』(2023)東京: 岩波書店(広瀬浩二郎と共著)がある。