No.105 - 味の素食の文化センター・人間文化研究機構共催シンポジウム「未来の豊かな食を考える~里山と海をつなぐ世界農業遺産~」

味の素食の文化センター・人間文化研究機構共催シンポジウム
「未来の豊かな食を考える~里山と海をつなぐ世界農業遺産~」

 

 人間文化研究機構と味の素食の文化センターは、食にまつわるシンポジウムを平成30年より毎年度共催しています。7回目を迎える今回は「未来の豊かな食を考える~里山と海をつなぐ世界農業遺産~」をテーマとして、研究者、農業従事者、料理研究家、県職員として世界農業遺産認定作業に関わられた方と様々な方にお集まりいただき、研究者による講演と、その講演を踏まえ、それぞれの立場からお話を伺いました。

 令和6年1月18日にTKPガーデンシティPREMIUM田町で収録した映像は、人間文化研究機構のYouTubeチャンネルと、味の素食の文化センターのYouTubeチャンネルで配信しています。

[講演1]佐藤 洋一郎氏

 講演「風土の中の食」の冒頭で、神様を家に招いて地域のご馳走でもてなす奥能登の正月儀礼「あえのこと」が紹介されました。佐藤氏は食料生産が盛んな能登における今回の地震災害が、能登地域だけでなく日本全体の食料事情の問題であるとして警鐘を鳴らしています。更に現在の食料を取り巻く環境において、ファーストフード等に見られるような遠方から多く食材を運ぶことで沢山のエネルギーを消費する点や、後継者不足による生産者の減少、獣害等といった様々な問題が取り上げられました。

 

佐藤 洋一郎氏(ふじのくに地球環境史ミュージアム 館長)

 

[講演2]阿部 健一氏

 続く阿部氏は、「未来の豊かな食を考える おいしい農業・楽しい食事」の講演において世界農業遺産に触れています。ユネスコの世界文化遺産のように建物といった不動産を保存するのではなく、世界農業遺産は各地域の人を含んだシステム上の色々な課題を人類の英知によって見直し、変えていくことが目的です。本講演では地産地消だけでなく、生産者と消費者とが分かれている現在において、消費者が口にする食べ物をどこでどんな人が作っているのかを知る「知産知消」の重要性を説いています。

 

阿部 健一氏(総合地球環境学研究所 教授)

 

[トークセッション]
 モデレーター 阿部 健一氏
 パネリスト  佐藤 洋一郎氏、大津 愛梨氏、コウケンテツ氏、青田 朋恵氏

 後半のトークセッションでは農家の家計事情や、滋賀県が県内での世界農業遺産の周知活動に力を入れたエピソード、国内外の食にまつわる家族の分担事情が紹介されました。今回は、10代~20代の若い世代を意識したプログラムとしており、最後に各パネリストが、子供たちへのメッセージと今後の活動について語りました。
 アンケート結果でも満足度が非常に高く、登壇者それぞれの立場からのメッセージが参加者に届いていることが伝わってくるシンポジウムとなりました。

 

トークセッションの様子

 

共催シンポジウムの詳細はチラシをご覧ください。

登壇者のご紹介
・佐藤 洋一郎氏
 ふじのくに地球環境史ミュージアム 館長
 総合地球環境学研究所 名誉教授
・阿部 健一氏
 総合地球環境学研究所 教授
・大津 愛梨氏
 O2Farm 共同代表
 総合地球環境学研究所 客員准教授
・コウケンテツ氏
 料理研究家
・青田 朋恵氏
 琵琶湖システム広報大使
 滋賀県立陶芸の森 副館長
 前・ここ滋賀(東京情報発信拠点)所長

 

(後列左)阿部氏、佐藤氏、人文機構 若尾、人文機構 宮崎
(前列左)味の素食文 西川、コウケンテツ氏、青田氏、大津氏、人文機構 木部

 

 

(文責:大場 豪 人間文化研究機構 人間文化研究創発センター研究員)